たった2日間の出来事で、
もう数日前に東京に戻っているのに、
いまだ心ここにあらずな感じ、なう。です。
▽
8月の16、17日で山形に行ってきました。
目的は、「シベールアリーナで、こまつ座の『父と暮せば』を見る」こと。
たかだか1時間半の芝居を見るのに、
山形まで往復2万円+宿泊代を掛けて行くなんて、
なんと贅沢な話!
でも、「行くしかない!」と思ってしまったのだから仕方ない。
そもそもは、山形のお菓子屋さんのシベールという会社が
シベールアリーナ&遅筆堂文庫山形館の運営の成果が認められ、
昨年度のメセナアワードで
「文舞」両道賞を受賞していたこと。
同じ地方企業のメセナでも、美術館ならなんとなく理解はしやすいものですが、
「シベールアリーナ」は卓球の試合が出来る体育館で、客席数500の劇場にもなる空間。
「遅筆堂文庫山形館」は井上ひさしさんの寄贈した蔵書が巡回する図書館。
その繋がりも不思議だし、とにかく何かひっかかるものがありました。
でも山形だし、「いずれ行けたらいいな」くらいのものでした。
もうひとつは『父と暮せば』。
「宮沢りえが映画に出てたなぁ、見逃したけど」くらいの認識だったのが
「これは見なきゃ!」となったのが、今年の5月。
本屋をふらふらしていて、ふと井上ひさしさんの本を読んでみようと思い
薄いし文庫だし、という気楽な理由で手に取ったのに、
一読ですっかり参ってしまいました。
どう参ったかは、まだ上手く文章にはならないけれど
まあとにかく、「これは舞台を見なければ」と思ったのでした。
そして、『父と暮せば』の東京公演の前売りを
予約しそびれてへこんでいた8月のある日、
『黙阿弥オペラ』で貰った財団のパンフレットが気になり、
シベールアリーナのサイトを見たら公演情報発見。
「空席があるっぽい、予定も空いている、これは行くしかない!」
と、3分後には電話をかけて予約完了。
年に1,2回あるかないかの「えいやっ」な感じ。
▽
で、とりあえず前日にネットでホテルを予約して、
新幹線の切符は直前に買って、
パタパタと16日の午後に出発。
つばさじゃなくてMaxやまびこの方に乗ってしまい、
上野のホームをダッシュして自由席に滑り込み、
翌日の句会に備えて、移動中に俳句を考えようと
「季寄せ」を見れば春夏の方で(今はもう秋・・・)役に立たず。
山形駅からバスか電車か迷って、1時間1本の電車を選んでみれば
「蔵王駅から20分」では到底着かないことに30分過ぎて気付く始末。
急いては事を仕損じる。ええ、分かってますとも。
広くて美しい山形の空の下、歩けども歩けども目印すらなく。
ケータイで地図をチェックしながら
怪しまれないように地元の人と会釈なんかもしつつ、
心の中では半ベソをかきつつ、滝のような汗もかきつつ、
50分くらいかけて到着。
パン工房でパンを買って、アリーナに滑り込み観劇。
感激。
水分が出きったぐちゃぐちゃの顔も、有難いことに暗闇に紛れ、
国道沿いにてくてくと、また50分くらいかけて駅へ。
着いてみれば電車は5分前に出てしまい、次に来るのは1時間後。
車社会を実感しつつ、虫の音を聴いて夜風に吹かれる
贅沢な時間をぼーっと過ごす。
駅前のスーパーホテルは、温泉が使えなかったけど快適で、
残念なニュースに驚きはすれども、安眠。
▽
ノープランの17日。
もう一回遅筆堂文庫を見に行こうかと思えど、あまりの暑さに辟易。
とりあえず駅ビルで帽子を選んだりしつつ、
実習仲間の大学が山形にあると知り、ごあいさつメールを送信。
「ひさしぶりですね!ぜひ会いたいです!
学校も休みだし、今日フリーなので良かったら山形案内しますよ!」
あまりのタイミングにお互いびっくり。
せっかくなのでお言葉に甘え、ドライブツアー。
遅筆堂文庫をじっくりぐるぐる見学していたら、
井上ひさし著作の棚に、
大好きな会社の同期みほちゃんのお父さんの本を発見。
対談されていたのね!とまたびっくり。
実習仲間は、そのお父さんの教えている大学にいることが分かり、
またまたびっくり。
しかも来週みほちゃんの結婚式だし、お父さんにも会うじゃん!と気付き、
あまりのタイミングに、びっくりの閾値越え。
東北と言っても広いはずなのに、つくづく不思議なもの。
胸はいっぱい、でも腹ペコになったところで
「山形は蕎麦も有名ですよ!」と聞き、
連れて行ってもらったお店が
「吉里吉里」。
そういえば、春の旅(鳥取~出雲)でも
1日目に劇場に行って、2日目に蕎麦だったな、と思いつつ
素敵な雰囲気とさっくさくの天ぷらとしっかりとした食べ応えのお蕎麦を堪能。
「じゃあついでに、山寺にも行ってみますか?」と、
行けるとは思っていなかった、
山寺へ。
へたれなので、ふもとだけうろうろ。
日枝神社にお参りして、
芭蕉の「閑けさや 岩にしみいる 蝉の声」の句碑を拝み、
重文になっている根元中堂を眺めて満足。
「山形の空は、広くていいんです。『紅の豚』のモデルになってるらしいですよ」
「あー、だからジーナの歌うシャンソンは『さくらんぼの実る頃』なのかぁ」
と、空を眺めながら市内へ戻る。
炎天下の七日町で、コーヒー屋さんを探し
探していたのとは違うお店で当てが外れたね、と苦笑しつつ
アイスコーヒーを飲んで涼み、気付けば電車の時間ギリギリ。
競歩で駅に向かい、句会参加をあきらめて一本遅い新幹線に変更。
「じゃあまた9月の後期実習で!」と、駅でさよなら。
案内してくれた彼女とは、掃除の担当場所が同じだったくらいで
実習中そんなにたくさん話したわけでもなく、
さらに言えば、学部の4年生だから実は6つも年下なのに、
うるしの話や進路に迷うけどまぁいいやみたいな事などを
気を遣いすぎずにいろいろ喋った不思議な1日。
帰りの新幹線で、暮れゆく山形の空との別れを惜しみつつ、
座席の心地よさにうとうとしつつ、メールで投句。
芭蕉のご利益は・・・どうかしら。
▽
帰ってからは、
吉里吉里人を読まなきゃと思ったり、
そこからボローニャに飛んでみたり、
ボローニャから鳥取に着地しそうな感じがしたり、
かと思えばいわきアリオスにまた飛びそうだったり、
収拾がつかなくて途方に暮れています。
去年の民藝と同じくらいの広がり方です。カオス!
どこに繋がっていくかはわかりませんが、
とりあえず、直感は間違ってなかったみたい、ということだけ。